Vol.01
土砂災害の危険性がある地域を抽出する地形判読AIモデルの開発

応用地質 天野 洋文氏、谷川 正志氏にインタビュー

イントロダクション

日本のみならず世界各国の行政を主な対象として、「地質調査」のサービスを提供している会社があります。今回ご紹介する応用地質株式会社です。地質調査とは、地面より下の岩石・地層の性質・状態・種類を、各種計測機器・試験などの手法を用いて地下の状況を明らかにする調査技術ですが、技術者によるデータの解釈をベースにした職人の世界と言う側面も持ちます。業界として新しいことを積極的に導入しにくい傾向にある中、応用地質は先陣を切ってAI事業の新規開発を進めています。

今回設定した課題は「災害危険箇所の抽出」。周囲には人の命に関わる災害危険箇所抽出を、AIを用いてどこまで正しく汎用的に運用できるのか疑問視する声もあったと言います。しかし現在、開発したシステムを用いることで、技術者とAIのハイブリッドによる運用が実現し、結果として事業の様々な広がりを実感しているそうです。

着手から6ヶ月という短時間での開発に成功した今回、その成功の秘訣はなんだったのか?そこにはどのような思いがあったのか?
インキュビットの未踏ソリューション開発サービスの裏側をクライアントと紐解くインタビューシリーズ第一弾では、開発の経緯から今後のプランまで、応用地質株式会社の天野洋文氏と谷川 正志氏のお二人にIncubit代表北村がお話を伺います。

プロジェクト概要

日本全国を対象に、地形的特徴から土砂災害の潜在的な危険性がある地域を抽出する新規事業の立ち上げ

クライアントが持つ課題

地形的特徴から土砂災害の潜在的な危険性がある地域を抽出するにあたり、地形判読業務作業の全部、または一部を自動化するAIエンジンを開発し、地形判読業務の高速化と広範囲対応を実現する

Incubitのテクノロジーを用いた課題解決までのアプローチ

  1. 課題解決の設計:「危険地域の抽出」を「0次谷」の抽出とし、0次谷を元に危険地域を推定する。
  2. 応用地形判読士による判読データを教師データとしてAIエンジンを開発する。
    • 開発Phase1:教師データを学習させてAIエンジンの開発を行う
    • 開発Phase2: 開発したエンジンを検証し汎用化する

ポイント

  • 「危険地域の抽出」という目的を、今回のフェーズでは「0次谷」 の抽出に絞って開発することとした
  • 機械学習を行うための教師データを応用地形判読士による地形図判読データとした

体制

クライアント:応用地質株式会社
ディレクター:北村尚紀(incubit)
エンジニア:Rayan Elleuch (incubit)

※「0次谷」とは、常時表流水がある谷の上部に位置する集水地形のこと。斜面の表層崩壊や土石流の発生源になりやすい。

応用地質株式会社

1954年創業。理学分野の「地質学」を土木工学の世界に持ち込むことで「地質工学」の市場を開拓したパイオニア。環境分野や地震防災分野など地質工学との境界領域を次々と開拓し、現在は社会インフラ・メンテナンス分野、防災・減災分野、環境分野、資源・エネルギー分野の開発・保全・活用支援の4つの事業を展開する。人類の変わらぬ価値観としての安全と安心を独創的な技術で支えることで、地球科学に関わるグローバルな総合専門企業グループとして、社会の安全と安心に寄与することを目指す。年間受注案件6000件の半数以上が官公庁から。

天野 洋文

天野 洋文

応用地質株式会社 情報企画本部 本部長
都市計画、道路交通分野のコンサルタントを経て2017年株式会社応用地質入社。情報企画本部長としてIoT、AI、クラウド、ICT等の情報技術を使った、業務改革と新たなビジネスの創出を指揮する。

谷川 正志

谷川 正志

応用地質株式会社 計測システム事業部 副事業部長
平成3年株式会社応用地質入社。専門は斜面地質。現在は計測システム事業部の副事業部長として、新規の計測機器の開発を行う。