インキュビット、気象研究所の委託先として竜巻・大雨・積乱雲・漏斗雲の自動判定を行う複数の深層学習モデルの本格開発を開始

News Press Release

深層学習を用いた画像認識技術の社会実装を手がけるインキュビット(本社:東京都渋谷区、代表取締役/ CEO:北村 尚紀)は、気象庁気象研究所(茨城県つくば市、以下「気象研究所」)が実施している「AIを用いた竜巻等突風・局地的大雨の自動予測・情報提供システム」において、2022年度、これまで開発を行ってきたレーダーデータからの竜巻や大雨検出、カメラ画像からの積乱雲・漏斗雲検出を行う深層学習モデルについて、実用化につながる一層の精度向上を目指した開発を実施します。

1. 本取り組みの背景

日本では、平均して年に20個以上の竜巻の発生が確認されています。竜巻は、家屋の倒壊や時には車両や電車を横転させるほどの凄まじい破壊力を持ち、短時間で甚大な被害をもたらします。このような気象災害の対応力の強化が求められる中、気象研究所では2018年よりAI(人工知能)を用いて竜巻を即時に検出し、進路を予測するとともに、竜巻の進路上に自動的にアラートを発信する情報提供システムの開発を進めてきました。
インキュビットは2020年度以降、気象研究所の委託先として、気象レーダーで観測された竜巻のドップラー速度データ(*1)を学習させ、竜巻を検出する深層学習モデルの開発を行なってきました。
しかし、これまでの研究開発では、レーダーにより観測された竜巻渦は季節や地形によってパターンが変化するため、竜巻渦の特徴を捉えきれずに見逃してしまう場合や、風速や風向において竜巻渦に類似したパターンを誤検知してしまう場合がありました。

2. 本年度の取り組み
これまで開発を行ってきたレーダーデータからの竜巻や大雨検出、カメラ画像からの積乱雲・漏斗雲検出を行う深層学習モデルについて、実用化につながる一層の精度向上を目指した開発を実施します。

取り組み例1:ドップラー速度データから竜巻を検出するモデルの汎用性向上
これまでの研究開発において、精度低下の主要因となっていた季節や地形などに起因する誤検知の原因分析を行ってきました。本年度はその分析から得られた知見をもとに、より多様な学習データの追加、学習データの質の改善、高度なデータオーグメンテーションの導入、複数のサブモデルの統合を実施し、異なる季節や場所等でも高精度を実現する汎用性の高い竜巻検出AIモデルの開発に取り組みます。

取り組み例2:カメラ画像から積乱雲・漏斗雲の検出
気象レーダーによる竜巻検出位置周辺にある様々なカメラ付き端末で取得した画像から、竜巻の発生源となる積乱雲および竜巻の顕著な特徴を示す漏斗雲を検出する技術を開発します。

このような技術の実現により、気象レーダーでは観測が難しい地上付近の竜巻の情報を取得でき、またレーダーだけでは正確に捉えきれない竜巻パターンについても正確な捕捉・追跡が可能になります。

3. 今後の展望
将来的には、本システムは、鉄道をはじめとする様々な高速交通の安全性の向上や自動運転技術への利用につながるとともに、将来的には、突風の影響を受けやすいドローンなど、さまざまな分野への適用も視野に入れたシステムへの発展も期待されます。

(*1) ドップラー速度データとはドップラーレーダーにより観測された上空にある雨などの降水粒子からの反射波を用いて、上空の風の速度と方向の傾向を観測したデータであり、竜巻の発生箇所に見られる竜巻渦と呼ばれる特徴的な風向きのパターンを検出する際に利用できます。

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*本事業には官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)予算を活用しています。
*This work was supported by Cabinet Office, Government of Japan, Public/Private R&D Investment Strategic Expan- sion Program(PRISM)in 2020, and will be continued in 2022
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